病因
腫瘍と癌
これまで胃ポリープを中心に、癌細胞の発生様式、癌組織発生、癌組織型について胃癌を例として述べてきましたが、それらの中で、潰瘍、ポリープなどは癌発生母地として臨床病理学的に重要ではなく、大部分の癌はいわゆる正常粘膜から発生するということがわかってきました。
そこで、本項と次項において、潰瘍、ポリープは前癌病変ではないということに焦点を当ててみたいとおもいます。まず潰瘍(腫瘍)と癌の関係からです。潰瘍辺緑に見出された微小癌を、潰瘍の癌化とした場合、それはわずかに1.5%となります。
しかし、それらの病巣のうち、微小癌と潰瘍との組織学的空間的重なりから、癌が潰瘍部から発生したことの因果関係が明らかなものは一個のみであるといった報告があります。次に、胃底腺粘膜に発生する潰瘍は極めて少ないのですが、その胃底腺粘膜から発生した癌の約80%は、潰瘍病変を伴っていたという事例があります。
癌と潰瘍、腫瘍の空間的重なりの所見を潰瘍の癌化とすると、これらのことからは、胃底腺粘膜に発生した潰瘍の大部分は癌化するのか、あるいは、癌における潰瘍は癌の二次的潰瘍化であるといったいずれかにということになってしまいます。
胃底腺粘膜に発生する潰瘍のほとんどはいわゆる急性潰瘍であることから、もし前者の場合であったとすると、ストレス潰瘍の大部分は癌化することとなり、実際とは乖離していることから、前者には当てはまりません。これらのように、潰瘍性腫瘍は前癌病変ではないということが証明されています。