胃の病気に関する疫学
遺伝
胃ポリープをはじめとする病変の中でも、最終的にその要因を探る上で研究対象となるものは、胃癌についてです。その胃癌における環境要因を本項からみていきましょう。
胃癌の発生頻度に影響を与えている各要因を宿主要因と環境要因にわけると、前者には遺伝、性別、体質、後者には食事、煙草などの嗜好品、社会経済的背景などがあります。本項ではまずその中でも胃癌について述べさせていただきます。
胃癌は家族集積性がみられることがありますが、宿主要因によるものなのか、環境要因の共有によるものなのかの相違を明確にする必要があります。胃癌は組織発生学的に腸型とびまん型にわけられ、一般に腸型の胃癌は、環境要因に負うところが多いのですが、びまん型の胃癌は遺伝背景の重要性が指摘されています。
フィンランドの調査によれば、胃癌発端者一親等と対照者を比べると、腸型では1.4倍で差がなかったのに対し、びまん型では前者に7倍も高率にみられたといいます。究極的には、癌遺伝子の研究の進歩が鍵と思われますが、現状ではいくつかの候補が上がっているものの、胃癌の発生、進行と密接に関連した、決定的な遺伝子の発見には至っていません。
また、ウィスコット・アルドリック症候群やⅠgA欠損症などの免疫不全症ないし皮膚筋炎などの自己免疫疾患において、胃癌を含めた悪性腫瘍を高率に合併するものがありますが、これらが癌遺伝子の問題なのか、免疫機構の異常が癌の発生を招くのかはなお不明であります。よって、今後も継続して癌の診断と治療の分野で遺伝子学の進歩と発展が期待されます。