胃の病気に関する疫学
性差
胃癌をはじめとして胃ポリープなど、胃の病気や病変に対して宿主要因が大きく関わっていることを前項から述べてきています。本項では性差に着目して述べさせていただきます。
全年齢を通してみると、女性は男性に比べて、著しく罹患率が低いという特徴がみられます。大阪府における罹患率をみてみると、人口10万人に対し、男性は73.7、女性は44.1であります。
この原因として、胃癌が食事や嗜好品を主体とする環境要因の影響を受けると仮定すると、女性はこれらの要因に対する曝露が男性よりも少ないといった仮説をたてることができます。しかし、これらの要因のうち、嗜好品を除いてはその摂取量に著しく男女差があるようには思われません。
したがって男女差に影響を与えている要因として、性ホルモンが注目されるのは必然といえるでしょう。胃癌の発生に性ホルモンが影響している事実の裏づけとして、ラットに発癌剤を投与すると、雄ラットでは高率(88%)に癌が発生するが、雌ラットでは全く発生しなかったという事例があります。さらに、雄ラットに女性ホルモンを投与すると、発癌率は、68%に低下し、去勢をした場合も29%と顕著に低下がみられたといいます。
一方、先の大阪府の統計において、胃癌の罹患率を年齢階級別にみると、30~39歳では男性14.9、女性18.1で、むしろ女性が男性を上回っています。また、その組織型は、低分化型腺癌の比率が男性の27.8%に対し、女性では48.2%と高くなっているのが特徴としてあげられます。